治験の募集にいたるまで
治験の募集情報が公開されるまでには審査や確認を繰り返す
新薬の候補が見つかってから実際に臨床試験(治験)が実施されるまでには医師や医療機関、治験モニター、治験コーディネーター、製薬メーカーなど非常に多くの人や組織がかかわり何段階も定められた順序を踏んで実施に至ります。新薬開発にかかわる治験ではたいてい製薬メーカー主導の治験が行われます。別掲のCROやSMOが関わるケースも増えて来ています。
◆厚労省への届出
製薬メーカーは厚生労働省に臨床試験(治験)を行うための届出をします。
◆治験の依頼
製薬メーカーが医療機関に治験の依頼をします。
◆事前審査
医療機関内に設置された治験センターで治験コーディネーターや医師が、依頼された治験が実施可能かどうかを事前に審査します。
◆治験審査委員会による審査
事前審査を通過した治験案件について医療関係者以外の委員を交えた治験審査委員会で詳細に審査します。
◆最終確認
治験審査委員会で承認された治験案件について治験担当医師と治験コーディネーターによる最終確認が行われます。
◆治験の募集
医師や医療機関から治験参加を勧められる場合でも、一般公募による治験参加の場合でも、これらの一連の手続きや審査を経てはじめて治験の募集情報が公開されます。
CRO(受託臨床試験機関)とは?
CRO(受託臨床試験機関)の支援で新薬承認もスピードアップ
CRO (Contract Research Organization)とは、医薬品開発において製薬企業(治験依頼者)が行う治験に関わる様々な業務を代行・支援する組織(医薬品開発業務受託機関)である。1970年代後半に日本でCROがスタートして以来、その市場は急成長していますが、その医薬品開発関連業務の委託割合はまだ1割ほどです。ただし、製薬メーカーはCROを活用することにより、医薬品開発の効率化、コストの削減、品質の向上、というメリットが得られるため、その利用率は高まってきております。2006年で約830億円だった日本のCRO市場が、2007年では約920億円にまで達するだろうと予測されています。(日本CRO協会「2006年年次業績報告」)。
欧米では臨床開発市場の40%をCROが担っており、日本でも将来的には、CROが製薬会社の臨床開発を大きく左右する時代が到来すると考えられています。
主に以下の仕事があります。
■モニタリング業務(CRA=治験モニター)
適切に臨床試験が実施されているか否か、医療機関を訪問し、調査・確認する業務。
■品質管理(QC)業務
モニタリングによって収集された症例報告書が治験の法律に基づいて記載されているか否かを確認する業務。
■データマネジメント(DM)業務
QCによって二次チェックされたデータを、データベースに入力したり、データ修正・管理する業務。
■統計解析業務
物統計学の手法を用いて治験の結果を分析し、治験薬の効果の有無を統計学的に証明する業務。
また、採用活動も活発で製薬業界未経験の方でも転職のチャンスがあります。
CRA(治験モニター)
製薬メーカーまたはCROからは治験を監視するモニター(CRA)が派遣される
モニターといえば一般的には被験者となる「治験モニター」を想像しますが、ここでは、製薬メーカーやCROから派遣された極めて重要な役目を担うモニター(CRA)のことです。治験モニター(CRA)は臨床開発試験(治験)に際して治験を主導する製薬メーカーやCROから派遣されて、治験契約、モニタリング業務、CRFチェック・回収、治験終了の諸手続きなどあらゆる業務に携わります。CRAの業務は治験開始前から終了後まで非常に煩雑です。
◆治験開始前のCRAの業務
・実施医療機関の適正評価および治験責任医師の選択
・治験開始前訪問時の確認(内容は多岐に渡ります)
治験実施計画についての合意、治験責任医師の責任分野について協議・合意、説明文書作成の依頼、モニタリングスケジュール、原資料検査(原データの直接閲覧)について、監査、調査の可能性、成績公表プラン、記録の保存期間、契約書&支払い関連
・医療機関側治験実施スタッフ全員への説明会
・臨床検査関連の事前確認
・治験関連支給品・諸種記録書式の準備・・・など
◆治験進行中のモニタリング業務
モニタリング業務はCRAの基本的かつ最も重要な業務です。GCPや治験実施計画書に従って治験が進行しているかどうかを確認します。
モニタリング訪問の目的
・実施医療機関が継続して治験を実施できる施設であることを確認
・治験がGCPと治験実施計画書を遵守して実施されていることを確認
・治験責任医師の責務がきちんと果たされていることを確認
・実施医療機関における被験者の医療記録及び、他の原資料にある情報/DATAが
正確に症例報告書に反映されていることを検証(SourceDateVarifivcation:SDV)
◆治験終了時の業務
治験終了時の重要業務のひとつは、治験責任医師に治験の終了を明確に伝えることである。
・未使用の治験薬/治験支給品と治験薬管理表の回収
・緊急時コードブレーク封筒
・すべての未回収のCRF(症例報告書)(未使用のものも含めて)と患者日記及び確認事項に対する治験責任医師のコメントの回収
・有害事象報告書 ・ 生物学的検体の管理記録と検体の処置手配(廃棄日の記入
・治験記録の保存について治験責任医師に確認
・支払関連の確認
・医療機関の長へ治験終了通知を文書にて提出するよう治験責任医師に依頼
※CRA:Clinical Research Associate(モニター)
※CRF:Case Report Form(症例報告書)
※GCP:Good ClinicalPractice(医薬品の臨床試験の実施基準)
SMO(治験施設支援機関)
SMOの支援で医師や看護師の負担が軽減される
SMO(Site Management Organization)というのは治験実施施設の治験業務を支援する企業のことです。特定の治験実施施設(病院など)と契約し、治験に関わる医師や看護師、事務局職員の負担を軽減することを目的として治験にかかわる煩雑な業務を支援します。SMOが支援することにより、治験実施施設のスタッフの負担が軽減され治験の質と効率が上がります。CRO(医薬品開発業務受託機関)と異なり、治験実施施設側の立場で業務を行います。
SMOの業務はおもに治験管理と治験コーディネートです。医師や看護婦が通常の医療業務の間にこれらの業務を行うことは大変な負担となります。そこで、SMOが治験実施施設に設置された「治験事務局」に支援スタッフを派遣するという形をとります。
SMOは以下の業務を医療機関に提供することにより治験業務の支援を行っています。
1.医療機関での治験を開始するための補助
・施設SOPの作成・提供
・GCP対応書式の提供
・治験責任医師/分担医師、治験協力者の教育
2医療機関での治験を実施するための補助
・治験事務局の立ち上げ
・治験事務局の運営補助
・治験事務局の教育
3.IRBの設立・運営の補助
・IRBのSOPの作成・提供
・IRB委員、IRB事務局の教育
・IRBの運営補助
・IRB事務局補助(議事録、審査結果報告書などの作成)
4.CRCの教育と派遣
・CRCの教育研修
・CRC業務のフォロー
・バックアップ体制の確保
CRC(治験コーディネーター)
CRC(治験コーディネーター)は治験を推進し、サポートする調整役
治験コーディネーター(※CRC:Clinical Research Coordinator以下CRC)は、病院などの医療機関において治験を推進し、サポートする役目を担う治験スタッフです。病院内にいる院内CRCとSMOから派遣される院外CRCがいます。製薬メーカー、医療機関、患者さんとの間をとりもつ重要な役割を果たしています。
治験コーディネーター(CRC)の具体的な仕事は
・治験の準備(治験依頼者との調整、同意文書・説明文書の作成支援)
・治験の実施(被験者の選定、被験者の適格性の確認等)
・同意取得に関する業務
・被験者の登録(登録用紙の作成補助、依頼者又は登録センターへの連絡)
・被験者のケア(来院日時・スケジュール確認、服薬指導、服薬状況の確認)
・医師への情報提供(GCP遵守支援、治験依頼者からの情報j伝達窓口等)
・CRAへの対応など
など非常に多岐にわたるものです。
新薬の開発という観点からは薬剤師資格者が、コミュニケーション能力においては看護師資格者が治験コーディネーター(CRC)として適性ですが、時として臨床検査技師資格者が
治験コーディネーター(CRC)となることもあるようです。
SMO(治験施設支援機関)などから派遣される治験コーディネーターの場合は、業務範囲を特定して受託する場合とあるゆる業務を一括して受託する場合があります。
IRB(治験審査委員会)
IRB(治験審査委員会)は治験参加者の人権と安全を守る
治験のルールでは「治験審査委員会(※IRB)の設置」と「治験審査委員会で治験の内容をあらかじめ審査すること」が義務付けられています。治験審査委員会では「治験実施計画書」が、
・治験参加者の人権・安全性・プライバシーが守られるようになっているか
・「薬(くすり)の候補」の持つ効果を科学的に適正に調べられる計画になっているか
・治験を行う医師の選定は適切か、
・参加される患者さんに対して治験の内容を正しくわかりやすく
説明するようになっているかなどを審査します。
治験実施施設に治験審査委員会をおく主たる目的は、治験参加者の「人権」と「安全性」に問題ないかどうか、を審査することにあります。これは治験審査委員会の設置がGCP省令により義務付けられており、GCP省令の最たる目的が治験参加者の"人権"と"安全"にあります。
治験審査委員会には、
◆医療を専門としない者
◆病院と利害関係がない者
が必ず参加しなければならないことが定められています。
治験参加者の人権と安全を守り、治験の公正さと信頼性を保つためにも必要なことです。製薬会社から治験を依頼された病院(治験実施施設)は、この委員会の審査を受けて、その指示に従わなければなりません。
スクリーニング(事前健康診断)
被験者選定のためのスクリーニングは2段階で行われる
治験に応募して参加する場合スクリーニング(ふるい分け)が行われます。治験の種類や募集サイトによっても違いはありますが、たいていの場合2段階構成になっています。1次スクリーニングは、Web上でが行われる場合と医療機関で行われる場合があります。1次スクリーニングをクリアすると、治験説明会やインフォームドコンセントを経て治験への参加の同意をしたあと、有資格者による詳細な健康診断(2次スクリーニング)が実施されます。
この2次スクリーニングは、治験に参加できる状態であるかどうかを確認するための健康診断ですので、これをクリアすると治験への参加が可能となります。
スクリーニングについての一般的な流れは次のようになっています。
○治験参加者募集のお知らせ(広告、ホームページなど)
↓
○(治験参加希望者が)応募または問い合わせ
○ボランティア(モニター)登録
※既に登録を済ませている方はそのまま次へ進みます。
↓
○1次スクリーニング
↓
○治験説明会に参加
↓
○治験参加への同意
↓
○2次スクリーニング(治験前の健康診断)
↓
○治験に参加
※指定された医療機関で健康診断を受ける場合でも無料、または治験にかかわる診察費・交通費を軽減するための謝礼・負担軽減費として、何等かの支援があります。また、経過措置を調べる際に治験終了後にも通院するケースもあります。
プラセボ/二重盲検法
プラセボ(placebo)は、偽薬を使った効果比較対照試験
治験行為の中には「プラセボ(placebo)」と呼ばれる偽薬を使って治験薬の治療効果を測定する試験があります。被験者(患者)は治験薬を投与されるグループと偽薬を投与されるグループに振り分けられます。偽薬プラセボ(placebo)は、外見・重さ・味覚など本物の治験薬と全くそっくりに造られていますが、薬として効く成分は入っていません。何故このような試験が行われるかというと、本物の薬の治療効果を実験的に明らかにするため、新薬が開発された根拠を示さなければならないからです。薬効成分の含まれないプラセボを投与して実際に症状が回復する事例や、逆に症状が悪化して、副作用が発生する事例もあるのです。
プラセボ(placebo)は学問上の研究の信頼性を得るためには必要とされているのです。大変重要な役割を果たすといわれています。偽薬プラセボの成分には、少量ではヒトに対してほとんど薬理的影響がないとされるブドウ糖や乳糖が使われています。
「薬」以外にも、本物の治療のように見せて実質上は効果のない治療を施すものや稀にではありますが「プラセボ手術」 などもあります。偽薬を処方する事に対する倫理的な批判もあるため、現在の治験における比較対照試験では類似薬効薬が用いられることが多いようです。
また、二重盲検法により患者さんや治験参加者の方が知らないだけでなく、実際に投与する医師や看護士、薬剤師の方も本物の治験薬なのかどうか分からないようになっています。これは態度に表れることを防ぐ為です。



